(日本語はうしろ)

The Politics of Creativity Talks:
Digital, Photography, Memory and Archive
Venue: NADiff a/p/a/r/t
Date: 28th August 2015 19:00-21:30
Speakers: Hidenori Watanabe (Information Architecture, Tokyo Metropolitan University) , Yoshitaka Mori (Sociology, 5 Editor) and Shin Mizukoshi (Media Studies, 5 Editor)

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We invited Dr. Hidenori Watanabe, Information Architect at Tokyo Metropolitan University to the third talk event ‘the Politics of Creativity’ at NADiff a/p/a/r/t, Ebisu. Dr. Watanabe gave a wonderful presentation based on his projects of archiving, including ‘Hiroshima Archive’ by using mapping applications on the Internet. We also had a discussion about how archives are constructed and visualized.

See Dr. Watanabe’s projects here: 

http://labo.wtnv.jp/

連続トークイベント『創造力の政治』
第三回「デジタル・写真・記憶・アーカイブ」
場所:NADiff a/p/a/r/t
日時:2015年8月28日(金)19:30-21:30
出演:渡邉英徳(情報アーキテクト)× 毛利嘉孝(「5」編集委員/社会学)× 水越伸(「5」編集委員/メディア論)

 7月から8月にかけて恵比寿のNADiff a/p/a/r/tで開催された『5』編集室企画のトークイベントのシリーズ「創造力の政治」の最終回は、情報アーキテクトの渡邉英徳さんをゲストにお迎えして、私と水越伸の二人の編集委員とトークを行いました。
 渡邉さんは、インターネットの地図アプリケーション/システムを利用しながら、人々の記憶をアーカイブ化するプロジェクトを各地で行っています。特に今回は、広島原爆や沖縄戦の記憶をインタビューや映像、当時の地図などの情報によってアーカイブ化し、地図上に配置した「ヒロシマ・アーカイブ」をはじめ具体的なプロジェクトを実際に見せていただきながら、プロジェクトの背後にある考え方や方法論について語っていただきました。
 渡邉さんのプロジェクトは以下で見ることができます。

 渡邉英徳研究室ウェブサイト: http://labo.wtnv.jp/

 アーカイブの問題は現在いろいろなところで語られています。
 図書館や博物館、美術館といった既存のアーカイブの施設が空間的にも限界を迎える一方で、映画やテレビ、そしてインターネットなどの新しいメディアのアーカイブはどのように構築し、維持するのか、まだまだ方針が定まっていません。
 近代的なアーカイブの構築は、国民国家の形成と結びつき、国民国家がその主体として位置づけられていました。けれども、グローバル化の時代のアーカイブはそもそも誰がどのように作り出し、維持するのかということさえもまだはっきりとしません。
 さらには、そうしたアーカイブをいったい誰がどのように将来活用するのかということについても十分議論がされていません。残念ながらアーカイブが作られても作ること自体が目的化して、そのまま放ったらかされているという例も少なくないようにみえます。

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 そういう状況の下で渡邉さんのプロジェクトは、アーカイブの未来を示す一つの指針となるものでした。何よりも驚かされたのは、アーカイブをデータ量や検索性によって示すのではなく、アーカイブ全体を俯瞰する視覚的な実験に溢れていることです。情報アーキテクト(建築家)という肩書きを使う渡邉さんの仕事は、まさにデジタル空間の中にひとつの建築物を作り上げて示す仕事なのです。
 もう一つ興味深かったのは、そのアーカイブを構築する作業の仕組みです。多くの場合、ワークショップを通じて参加者を募り、その参加者がボトムアップ型の作業によりアーカイブを構築する過程において、アーカイブを作る人たちのネットワークが形成されているのです。この自律しつつ、成長する生きたアーカイブのあり方は、ともすると静的で固定的に取られがちなアーカイブの概念を大きく発展させる重要な示唆を提供しています。

 渡邉さんのお話は、私たち『5』の活動とも共鳴することがたくさんあります。これからもいろいろと対話を続けていければと考えています。

 さて、NADiffのご協力でお送りしたトークイベントシリーズ「創造力の政治」。おかげさまで、毎回盛況でした。雑誌やウェブとはまた違った会話が生まれ、ネットワークが広がったと思います。『5』は、こうしたイベントを含めて複合的な場を作り出すネットワークです。さらに今後もいろいろな企画が続きますが、宜しくお願いいたします。

Yoshitaka Mori / 毛利嘉孝